2017.12.12 Tuesday 16:54

ルールの崩壊


 秩序のある社会とは、一般市民がルールを守ると同時に、世の中を統治する側もルールを守って仕事をする社会である。しかし、今の日本では、人々にルールを守らせる側が自分の都合の良いようにルールを伸ばしたり、縮めたりして、不公正で不愉快な社会ができつつある。
 ルールを伸ばすとは、本来法規則が立ち入るべきでない領域にまで踏み込んで、個人の自由を押さえつける現象である。生まれつき髪の毛の茶色い女子生徒に校則だからといって髪の毛を黒に染めさせた学校があった。身体の特徴を無理やり強制させるなど、教育の場ですべきことではない。さらに安倍政権は家庭教育支援法という法案を準備している。これは家庭や子育ての「あるべき姿」について、バカバカしい校則のようなものを法律の形で国民に押し付けようとするものである。
 ルールを縮めるとは、本来守るべきルールを自分たちには適用せず、好き勝手に権力を謳歌することである。森友学園に対する国有地売却の不当な値引きとそれに関する証拠の隠滅がその典型例である。会計検査院が不適切と指摘したにもかかわらず、大臣も官僚も問題ないと言い張って、一切責任を取ろうとしない。
 今の為政者は、ルールは常に国民を縛るもので、自分たちは何にも縛られないと錯覚している。ふざけるなと言いたい。
東京新聞11月26日

2017.12.12 Tuesday 16:53

沖縄と立憲主義

 先週、久しぶりに沖縄に行って、学者や新聞記者の友人から沖縄の現状について話を聞いた。中でも衝撃を受けたのは、集団的自衛権行使の体制は沖縄で着々と準備されているということだった。
 10月31日の朝日新聞に、自衛隊が海兵隊のような部隊を創設という記事が載った。このことの重要性を沖縄の人々から教えられたわけである。米海兵隊は、万一戦端が開かれた場合、沖縄が中国や朝鮮半島から近すぎるという理由で、グアムなどに撤退する計画を立てている。米軍が引いた後の空白を埋めるために、自衛隊に海兵隊のような部隊、水陸機動団を設置し、米軍基地に駐屯させる。辺野古の新基地も自衛隊が使うことになるのではないかと地元の人々は予想している。
 水陸機動団は有事の際の離島奪還を行う水陸両用作戦の実施部隊である。日本の領土を守る、あるいは奪還するための部隊だから自衛のための組織と一応は言えるのだろうが、装備や訓練では米軍と一体化しており、集団的自衛権行使の実際の担い手になる。琉球大学の島袋純教授は、水陸機動団が米軍の指揮で動き、日本の憲法を超えた行動をとる危険性があると指摘する。
 安保法制は違憲だと議論する段階は過ぎ、立憲主義が沖縄から崩壊する危機を防ぐため、実体的な防衛政策の議論をしなければならない。

東京新聞12月3日

2017.12.12 Tuesday 16:52

租税国家の危機

 安倍政権の目玉政策、人づくり革命の柱である子育て支援の充実のために、首相は経済界に3千億円の拠出を求めている。この負担の穴埋めのために雇用保険と労災保険の料率を引き下げるという新聞報道もあった。社会保障の財源は祭りの寄付とは違う。これは国の形をゆがめる奇策である。
 近代国家は租税国家と呼ばれる。国家の仕事は国民が払う税金によってまかなうという意味である。安倍政権が子育て支援を充実したいと思うなら、税金によって行うべきである。財源が足りないなら国民に説明し、負担増を提案すればよい。国民がどれだけ税を払い、どれだけの政策的便益を得るかを考えることこそ、民主政治の核心である。
 根拠不明の拠出金で子育て支援の充実を図れば、経済界の慈善で恩恵を及ぼすことになる。この政策の対象となる人々は経済界に恩義を感じさせられるだろう。しかし、それは人々の生きる権利を保障するという公共的政策の意義をそこなう。また、経済界はいつ心変わりして拠出を拒むか分からない。だからこうしたやり方では政策の継続性は確保されない。
 何より、大企業のごまかしや不正が次々と明るみに出る昨今のこと。このような超法規的慈善が企業の犯罪を隠蔽するための隠れ蓑になる恐れもある。こんなくだらない思い付きはつぶさなければならない。

東京新聞12月10日

2016.07.25 Monday 14:24

自由という錯覚

 フランスの思想家、ルソーは代議政治を批判して次のように書いた。
「イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。彼らが自由なのは、議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民は奴隷となり、無に帰してしまう。」
 今、安倍政権はルソーが批判したイギリスの権力者と同じことをしている。参議院選挙が終わるや否や、沖縄県北部の高江でヘリパッドの工事を開始した。反対する住民に警察は暴力を加えている。さらに、政府は翁長知事を相手取って、埋め立て承認取り消しについて違法確認の訴訟を起こした。
 沖縄県民の意思は度重なる選挙で明らかになっている。この参院選でも、現職の沖縄担当大臣を大差で落選させた。しかし、安倍首相にとって、沖縄県民は日本国の主権者には含まれておらず、県民が投じた票は子供銀行のおもちゃのお金の如き紙切れなのだろう。
 本土に住む我々にとって、これは他人事ではない。国民の一部を主権者扱いしないという権力者の傲慢と差別を許せば、次は他の地域、他の集団の人々が同じように主権者から除外されることになる。国政選挙の結果をここまで無視されたら、沖縄以外に住む国民も、民主主義を蹂躙されたことに対して、ふざけるなと声をあげなければならない。

東京新聞7月24日

2016.07.18 Monday 14:26

東京都知事にできること

 都知事選挙が始まった。参議院選挙の最中からのドタバタ劇で、各候補とも政策については準備不足で、議論はなかなか深まらないだろう。ここでは、候補者の政治理念や哲学も重要な判断材料となる。予算が必要な政策は付け焼刃で議論することはできない。しかし、東京をどんな社会にするかという理念については、すぐに論戦ができる。
 私が憂慮しているのは、石原都政以来、東京の公立学校に対する管理、統制が強まり、現場の先生方が息苦しい思いをしながら、教育に当たっていることである。学校では、子どもと向き合うことよりも、上から降りてくる様々な指示に従い、教案や書類を書くことに先生方が忙殺されているという話をしょっちゅう聞く。
教育予算を増やすことも必要だが、学校に自由を取り戻すことには予算なしでもできる。特に、教育委員会の人事を刷新し、権力者の顔色をうかがう官僚主義者を教育の世界から一掃することは知事のリーダーシップで可能なはずである。
 もう1つは差別の禁止、人権の尊重である。今回の選挙戦を、ヘイトスピーチをまき散らす機会に利用している不埒な人物も立候補している。これも知事のイニシアティブで解決できるはずである。
 民主主義と人間の尊厳について、各候補は信念と理念を語ってほしい。

東京新聞7月17日

2016.07.11 Monday 14:20

中立報道が民主主義を壊す

 投票日を迎えてが、今回の参院選には国民の関心が盛り上がらず、投票率が50%を切ることも心配されている。
 野党結集を求めてきた自分たちの力不足を棚に上げるつもりはないが、メディア、特にテレビの選挙報道の貧困には文句を言いたい。参院選の最中だというのに、テレビのワイドショーは東京都知事選挙の候補者について憶測を繰り返すばかりだった。
 テレビ報道に中立を求める政府の脅かしは、てきめんに効果を表していると思う。中立という言葉は誰も否定しない。しかし、2014年の総選挙の際に安倍首相が民放のニュース番組に出て、街の声がアベノミクスに批判的であることを公平な報道ではないと言ったあたりから、政府は中立の中身を都合のいいようにねじ曲げた。
 政権の圧力の前に、テレビ局は批判や疑問が多いという現状をそのまま伝えることではなく、賛成と反対を同じ比重で両論併記することを中立だと考えるようになった。そして、選挙はどう扱っても偏っているとケチをつけられる可能性があり、ならば最初から触れないようにしようということになった。
 もちろん、有権者の行動でマスコミの予想を覆すことこそ民主主義である。ともかくみんな投票に行っていただきたいと切望する。

東京新聞7月10日

2016.07.04 Monday 14:20

盗人に追い銭

 民主主義って何だ?政治家や政党が掲げた政策の中から、国民が望むものを選び、選ばれた代表者や政党が多数の国民が求めた政策を実現する作業という説明が、一応もっともらしい定義である。しかし、現実の政治と教科書の定義の間には大きな乖離がある。
 選挙の時に訴えた政策を実行しないことも、選挙の際にまったく予告しなかったことを実行することも、しばしば起こる。それは必ずしも非難すべきことではない。世の中の動きは複雑かつ急激であり、選挙の時に言わなかったことに至急取り組む必要があるかもしれない。
 国民の命運を左右する重要な政策をインフォームド・コンセントなしに決定した場合、その直後の選挙において国民自身が賛否の意思表示をしなければならない。勝手に決められたことに国民が怒るなら、その怒りは直後の選挙で表現し、勝手に決めた為政者を罰することが必要である。為政者が約束を破った時にはけしからんと声を上げることも大事なことではあるが、選挙で勝てば為政者は、国民が自分の政策を事後的に追認してくれたと正当化する。
 憲法を蹂躙し、国民をたぶらかした権力者を選挙で簡単に勝たせることは、盗人に追い銭を与えることを意味する。選挙とはその国の人々がどこまでお人よしかを測るテストでもある。

東京新聞7月3日

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