2011.12.09 Friday 15:12

リーダーシップと民意

 

 11月の上旬、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加をめぐって、国論を二分するような論争が行われました。野党はもちろん、与党内部にもかなり強い反対論があったにもかかわらず、野田佳彦首相は事実上ホノルルで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、TPPへの参加の方針を各国首脳に伝えました。また、消費税率の引き上げによる財政健全化を、フランスで開かれたG20(20カ国首脳会議)で国際的な公約として掲げました。


 このような首相の行動は民主主義の原理に照らして適切なものでしょうか。このテーマは、政治思想の歴史上、古来様々な思想家が論じてきました。まず、民主党は前の総選挙や参議院選挙のマニフェストでTPPについては何も語っていませんし、増税についてはこの衆議院議員の任期中は消費税率の引き上げをしないと主張しています。したがって、野田首相の言動は民主主義のルールに反し、国民に対する背信行為だと言わなければなりません。


 他方、次々と起こる新たな問題に対する判断をする場合、すべて民意にしたがって行動することが指導者に要求されるのかどうかは、難しい問題です。私はTPPに関しては、野田首相と違う意見を持っていますが、首相が日本の将来を必死で考えた末に一つの判断を下すのは、それが多数の政治家の意見に反するものであっても、必要なことだと思います。今回については、野田首相がそうした説得の努力を払っているとは思えませんが。


 まず、選挙の時に、それ以後3、4年間にわたる国政の指導者の判断を、国民がすべて具体的に指示しておくことは不可能です。また、民意をどのように捉えるかという問題もあります。熟慮を経ない雰囲気のようなものに政治家が縛られる政治は、民主政治とは似て非なるものです。


 政策の適否は実際にやってみなければ分からないという場合もあります。大きなテーマについて、政治家や国会の多数が決定を下したらそれで終わりではありません。政策を実施してみて弊害が分かればそれを柔軟に改めるという帰納主義的な発想が、政治には必要です。


 指導者は自らの判断の根拠となった事実認識や、価値理念を示し、国民を誠実に説得しなければなりません。そして、実行に移した後も、問題があればこれを虚心に認め、次なる修正策を考えなければなりません。日本の場合、指導者にそうした誠実な姿勢が欠けていた事例が多く見受けられます。


 今回の野田首相の判断が指導者として適切なものであったのかどうか、国民が説得されたと思えるかどうかは、次の国政選挙で意思表示するしかありません。国民は一連の経緯をしっかり記憶し、次の選挙における判断材料としなければなりません。

第三文明12月号


Comment:
Add a comment:









 
RECOMMEND
CALENDAR
NEW ENTRY
ARCHIVES
CATEGORY
COMMENT
PROFILE
MOBILE
LINK
SEARCH
OTHER

(C) 2018 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.