2010.11.01 Monday 00:55

民意に応える政治とは

 テレビの大河ドラマ、竜馬伝を時々見ている。史実からかけ離れた誇張もあるのだろうが、日本を変えようという若者の志には感動する。それにしても、革命家にとって革命の成就を見ることは必ずしも幸福なことではない。西郷隆盛など維新の功労者の一部は新政府に反旗を翻すこととなった。竜馬をはじめ、高杉晋作、吉田松陰などは維新を見ることなく死んだから美しく見えるということも言えるのかもしれない。

 そんなことを考えるのも、民主党の最近の混迷が目に余るためである。政権交代の旗を振ってきた私など、大げさに言えば身の置き所がない。九月の代表選挙は権力闘争という意味では盛り上がったが、菅政権の政策路線の明確化や指導力の強化には全くつながっていない。衆議院北海道五区の補欠選挙で大敗したばかりだというのに、岡田克也幹事長は臆面もなく企業献金の受け入れを表明した。小口の企業献金を受け取ることはマニフェストでも否定していないと言うが、それは屁理屈である。企業献金の解禁の背後には、今まで自民党の支持基盤を構成していた各種の業界団体を民主党の側に取り込もうという思惑があると報じられている。それが本当なら、民主党はもう一つの自民党に成り下がるだけである。

 民主党は民意に応える政治を実現すると同時に、民意そのものを吟味するという両面の課題に直面している。民意に応えるとは、昨年の総選挙で示した政策を実現することに他ならない。もっとも、財源問題に代表されるように、マニフェスト自体が詰めの甘いものだったので、そのまま実現することはできない。それにしても、鳩山前首相が打ち出した「命を大切にする政治」、「居場所と出番のある社会」などのスローガンは、菅政権が引き続き目指すべきものである。追求すべき価値観さえ明確になれば、多少の修正を提起しても、議論は進むであろう。

 菅首相は、政権交代に希望を託した国民の声よりも、一度も民主党に投票したこともないし、政権交代など起こってほしくないと思ってきた人々の声を必死で聞こうとしているように思える。法人税減税論議など、その代表例である。企業収益が増えても労働者の賃金が減少したことは、小泉政権時代の「いざなぎ超え」と言われた景気回復が示している。今必要なのは、経済界の短期的利害に振り回されることなく、産業のイノベーションのための道筋を描くことである。

 他方、民意そのものも暴走する懸念がある。小沢一郎前幹事長の資金問題をめぐる検察審査会の判断はその一例である。強制起訴を受けて、多くの新聞は小沢氏の議員辞職を求める論説を書いた。しかしそれは民主主義の根底を脅かす議論である。検察審査会は、検察官が有罪を立証できないと判断した事案について、公判を求めただけである。その程度の不確かな民意によって政治家の政治生命が絶たれるという前例を作ってはならない。メディアが一方的なイメージを流布し、そのイメージに基づいて世論が形成され、政治家や行政が世論を忖度して動くことは、決して本来の民主政治ではない。

 民主党の指導者は、民主政治の道理を自ら明らかにしたうえで、民意への対処の仕方を明確に示すべきである。重要な政策については国民との約束を果たすのが民主政治の基本である。同時に、法的責任は民衆感情とは切り離し、事実と法に基づいて明らかにすることも民主政治の重要な要素である。政治の刷新を求める確かな民意に応えるためには、法的責任の筋道は曲げず、同時に疑惑をもたれた政治家が進んで情報を提供し、自らの政治手法を説明することが必要である。政策も政治手法も自民党時代への回帰ということになれば、その後に来るのはいらだった民意を最大限利用するデマゴーグである。民主党には危機感が必要である。(山陽新聞10月31日)


Comment:
2010/12/18 2:44 PM, 千葉 閑太郎 wrote:
小沢代議士の検察審査会による強制起訴の問題については全く同感です。国民はこうした問題に関心を奪われて、もっと大事な問題から目をそらされている感じがします。
2010/12/22 4:11 AM, 得田さん wrote:
詐欺師の片棒を投げ捨てるのはさぞかし楽でしょうね、少なからず議員は罰を受けますがあなたのような方々は・・・
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