2010.06.30 Wednesday 00:20

参議院選挙の争点

 鳩山政権の崩壊、菅政権の誕生、そして民主党支持の急速な回復と、この1か月ほどの間、政治は目まぐるしい動きを続けてきた。私なども、鳩山退陣の時には表紙を替えただけで民主党支持が戻るなどと安直なことを考えてはならないと、民主党に警告を発していたのだが、その予想は外れた。

 民主党支持のV字回復は、鳩山・小沢には幻滅したが、政権交代自体にはまだ期待しているという民意の表れである。国民は寛大にも、民主党に2度目のチャンスを与えた。3度目はない。菅政権が実績を上げることができなければ、国民は政党政治そのものに不信を抱くことになる。今、鹿児島県阿久根市の市長が何かと話題を呼んでいるが、あの種の独裁的なリーダーに捨て鉢な希望を託すという現象が国レベルでも起こるかもしれない。

では、民主党は最後のチャンスをどのように生かすべきか。また、今回の参議院選挙をそのためにどのように位置づけるべきか、考えてみたい。この参院選の最大の意義は、政権交代から9か月経って、初めてまともな政策論争ができる機会が訪れたという点にある。昨年の総選挙では、政権交代自体が唯一の争点となった。半世紀に及ぶ自民党政権を倒す機会だったので、それもやむを得なかった。民主党は政権交代を全面に掲げ、政権交代によって何を実現するかという政策面の準備を十分しなかった。もちろんマニフェストは作成したが、政権運営の基軸になるレベルのものではなかった。その未熟さは、予算編成や税制改正の議論の中で、たとえば揮発油税の暫定税率の扱いや高速道路無料化の進め方などに関して露呈された。

政権をまったく経験したことのない政党が政権綱領を作るのだから、多少詰めが甘いのも仕方ない。初めての政権交代だから試行錯誤がつきまとうのもある程度やむを得ない。問題は、政権運営の経験の中で、自らの誤りに気づき、これを自分で修正できるかどうかという点にある。

菅首相が選挙に向けて、いささか唐突であるが、財政健全化や消費税率の引き上げの必要性を提起した。手順が違うという批判もあるが、私は菅首相の提起を、今までの政権運営の誤りから学んだ成果として、肯定的に評価したい。民主党は昨年のマニフェストで無駄を省いて子ども手当などの財源を作り出すと訴えていた。しかし、実際に政権を取って予算編成をすれば、そう簡単な話ではないことが分かったはずである。マニフェスト違反という非難を浴びせるよりは、我々がこれからどのような社会を造り出そうとするのか、そのために財政基盤をどのように再建するのか、大枠に関するまじめな議論が始まったと評価すべきである。

もちろん、民主党の変身をただ肯定するわけにはいかない。今までの民主党政権の根本的な欠陥、マニフェストにおける理念の不在という問題を乗り越える意欲があるかどうか不明だからである。昨年のマニフェストは項目の羅列に過ぎず、民主党がどのような社会を目指すのか、基本的な理念が不明であった。だから、たとえば子ども手当をもらっても、もらう側は手当の意義が理解できず、せっかくの画期的な政策にもかかわらず、国民の評価は低い。

国民の負担増に関する議論を進めるためには、政党、政治家はより一層明確な理念を掲げる必要がある。菅首相が消費税率の引き上げを呼びかけるのはよいとして、それがどのような社会を建設する財源になるのか、具体的に説明しなければならない。みんなで負担し、みんなが受益する福祉国家を作るための税制改革なのか、財務官僚の口車に乗せられて財政の帳尻を合わせるための増税なのか、国民はまだ納得していない。参議院選挙は、政権選択に直結しないという意味では、自由な論争をする好機である。これからの選挙戦の中で、そのような論争を深めてほしい。(山陽新聞6月29日)


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