2010.01.11 Monday 03:23

鳩山政権は通常国会にどう臨むべきか

 藤井裕久財務相が辞任し、通常国会に臨む鳩山政権の態勢が揺らいでいる。小沢一郎幹事長の政治資金をめぐる疑惑に対する検察の追及も進められており、通常国会における野党の攻撃材料には事欠かない。わずか4か月前に、国民の大きな期待の中でこの政権が発足した頃を思い出せば、民主党および政権の失速に愕然とするばかりである。

 各種の世論調査によれば、鳩山由紀夫首相に対する国民の視線は厳しくなったが、民主党に対する支持はそれほど落ちてはいない。政権運営や政治家の体質に対して不満もあるが、せっかく起こした政権交代なのだから、少し長い目で見ようというのが、今の民意であろう。長年続いてきた政治や行政の仕組みを一瀉千里に変えることは難しいという現実主義が、国民の間には存在している。だとすれば、鳩山政権はそのような我慢強い国民の期待を的確に読み取り、政権の立て直しを図らなければならない。

 通常国会では、予算と関連法案の審議が最大の課題となる。国会論戦に誠実に取り組み、鳩山政権が目指す理念、ビジョンを具体的に語ることこそ、政権立て直しの王道である。この政権が創設しようとしている子ども手当や農家戸別保障などの新機軸は、社会に活力を回復し、地域の疲弊を止めるために、きわめて意義深い政策転換である。その点は高く評価したい。

しかし、昨年末の予算編成過程では、こうした政策の意味について十分なアピールが行われなかった。制度の細部に関して最後まで異論が交錯し、結局小沢幹事長が乗り出して物事をまとめたという印象であった。今鳩山首相がなすべきことは、施政方針演説や予算審議の中で、どのような理念に基づいてこのような政策を打ち出したのか、国民のどのような層に負担を求めていくのかを、具体的に語ることである。

菅直人氏は、昨年末に日本経済の現状をデフレと認定した。デフレとは経済が収縮するだけではなく、人心の収縮をも意味している。国民が未来に対して意欲と希望を持てるようにするためには、政治指導者がどのような社会を目指すのかを語ることが不可欠である。マニフェストに掲げた項目の中でどれを実現できなかったかなどというのは、些末な議論である。たとえば、揮発油税の暫定税率の引き下げという公約を反故にしたことは確かに裏切りだが、環境を軸とした新たな産業の育成という大目標を掲げて、化石燃料に対する税金をそのための重要な財源と位置づけるといえば、国民も納得するのではなかろうか。マニフェストの中には十分練られていない政策が入っていたことは事実であり、政権発足以後の政策展開の中でこれを見直すことを率直に説明すればよい。

今年は夏に参議院選挙が予定されている。これに向けてマニフェストを作り直す作業も必要となる。大きな気がかりは、民主党における政策論議が幹事長室に一元化され、議論の活気がまったく伝わってこない上に、議論の過程も著しく不透明になったという点である。党として参院選に向けて政策を作る作業は、内閣とは別に取り組まなければならない。政務調査会を廃止した民主党は、党としての政策論議の機関を持っていない。小沢幹事長は選挙対策といえば組織を固め、候補者を選挙区に売り込むことだと考えているようだが、政策なしに選挙を戦うことはできない。政務三役についていない与党の議員を再結集して、政策論議の仕組みを作り直すことは急務である。

半世紀以上に及ぶ自民党と官僚による統治の仕組みを組み替えることは大仕事である。途中に試行錯誤があるのは当然である。発足以来4か月の様々な経験や失敗を虚心に反省し、国民に試行錯誤の実態を明らかにすることが、むしろ政権に対する信頼を回復するためには必要である。通常国会を1つの契機として、民主党は自らの政権運営を点検し、当初の思いこみにとらわれず、内閣と党のガバナンス(統治)のあり方を柔軟に工夫すべきである。(山陽新聞1月10日)


Comment:
2010/01/17 1:13 PM, 猫背 wrote:
先生は昨年、小沢氏に対する検察の捜査を、戦前の青年将校にも例えて「暴走」と批判しておられたように記憶していますが(記憶違いであればすいません)、現在はどのように見ておられるのでしょうか。なにがしかの場で見解を表明することは考えておられるのではないかと思いますが…。気になっておりましたので。
Add a comment:









 
RECOMMEND
CALENDAR
NEW ENTRY
ARCHIVES
CATEGORY
COMMENT
PROFILE
MOBILE
LINK
SEARCH
OTHER

(C) 2017 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.