2013.01.07 Monday 18:56

2013年の政治

 今年の政治の最大のテーマは、第二次安倍晋三政権がどのような政策を展開し、夏の参議院選挙で国民はそれをどう評価するかということである。実務家肌の菅義偉氏が官房長官に座り、政権は安定感を持った。発足後の動きを見る限り、憲法や安全保障問題については持論をある程度封印し、慎重な姿勢を取るようである。他方、経済については、インフレターゲットの設定と国土強靭化の公共事業拡張で、大胆な政策を追求する気配である。

 政治の基本原理をめぐる論争について、あえて波乱を起こさないというのは、賢明な態度である。欲を言えば、前回の安倍政権の発足時のように、韓国や中国を訪問して、関係修復のイニシアティブをとってもらいたい。日本国内のナショナリストを抑えることができるのは、安倍首相だけである。安倍自民党が、口先だけで威勢のいいことを言う日本維新の会との違いを打ち出し、国の運営についての現実的な責任感を発揮すれば、この政権は結構持つのではないかと予想する。それには、具体的な問題を一つ一つ解決するという保守政治本来のプラグマティズムが必要である。

 振り返れば、小泉純一郎首相の退陣の後、日本では毎年首相が交代する不安定が続いた。安倍首相こそ、この混乱の口火を切った責任者である。今回再登板したからには、一定期間政権を持続し、国民に示した政策を実現することで、国民の負託に応える義務がある。私の個人的な好き嫌いは措いて考えれば、安倍政権が自民党本来の保守政治を取り戻すことは、日本にとって重要である。

 私個人の関心は、民主党が立ち直れるかどうかという問題にある。総選挙の結果、日本の政党政治はかつてないほどいびつな構造になった。共産党、社民党が担ってきた戦後革新は、事実上消滅した。残念ながら、護憲平和のスローガンは、現代の日本人には響かない。安倍自民党のさらに右側に、日本維新の会という過激政党が位置する。選挙制度がもたらしたトリックとはいえ、政党の配置は国民の政治意識からはかけ離れている。

 国民の政策課題に関する常識とは、次のようなものだろう。他国に侮られることは望まないが、領土紛争を戦争によって解決することは望まない。信頼できる社会保障を望む一方で、何らかの負担増はやむを得ないだろう。将来世代の日本人のために、原発を減らしていかなければならない。働く人間も恩恵を得られるような景気回復が必要だ。民主党こそ、こうした常識を反映する党として、二大政党の一翼を担っていかなければならない。

 政党政治には勝ち負けがつきものであり、大敗も嘆くには及ばない。むしろ、野党の時こそ政党が自らの来し方行く末を考える好機である。また、大敗の後こそ、指導者を刷新することができる。海江田万里代表の下で、民主党は三年余りの政権の経験を総括し、なぜ国民の期待に応えることができなかったのか、自ら明らかにしなければならない。また、民主党はどのような日本を作るのか、理念を彫琢すべきである。そして、自民党との間に明確な対立構図を作り、国民に選択肢を提供することこそ、野党第一党の使命である。

 参議院選挙で頽勢挽回などと性急なことを言ってはだめである。もっと長い時間軸の中で、民主党が何をなすべきか熟慮すべきである。幸い、総選挙で当選した中堅議員の中には、副大臣、政務官として政策決定に携わった優秀な政治家もかなり存在する。その中から未来の首相候補を育てるくらいの意気込みで、党の再建に取り組むべきである。

 今年の参議院選挙は、日本の命運を左右する重大な選択の機会となる。安倍首相が参議院選挙を乗り切るために穏健なふりをして、選挙後に本当の狙いをあらわにするというのでは、国民の政治不信は高まるばかりである。政党は、政治不信を招いたことに対する自らの責任を明らかにしたうえで、理念を国民に語り、国民に有意義な選択の機会を確保しなければならない。

熊本日日新聞1月6日


Comment:
2013/01/16 12:03 AM, a改めb wrote:
共産党、社民党が担ってきた戦後革新は、事実上消滅した。残念ながら、護憲平和のスローガンは、現代の日本人には響かない。

そんなわけない。社民党に入れた人間は多いはずだ。憲法改正・国防軍とか言い始めた安倍自民に抵抗すべく社民党に投票したものはいなかった事にされるのか。その他にも、なぜ政権交代できたか考えればわかるはずだ。命を大切にする政治という鳩山政権の志があるのは社民党のはずだ。『ポスト新自由主義』なんて本を出しておいてそれは無いだろう。政権交代前に格差・貧困・派遣・非正規がクローズアップされたのにこんなふざけた選挙結果があっていいわけない。共産党のポスターは至るところにある。党員たちも支部もしっかり残っている。今回の衆院選で共産党の志位和夫は議席倍増を見込んでいたはず。明らかにおかしい。勝手に消滅させるな。現代の日本人像を決めつけるな。選挙結果に合わせた無茶苦茶な論理だ。アメリカ支配層が望んだ選挙結果を無理矢理に正当化するな。
これでは、まるで『1984』の世界ではないか。
2013/01/16 7:44 PM, a peace constitution wrote:
「残念ながら、護憲平和のスローガンは、現代の日本人には響かない。」

このつぶやきが分からなくもない。
しかし,私には響きます。

「・・・太平洋戦争によって,日本だけでも300万人以上の命が失われました。それら数多の死者からの贈り物が平和憲法であり、・・・」(加賀乙彦『不幸な国の幸福論』集英社新書 p143)

平和憲法を守りたい有志の方が、「国防軍反対」と声をあげたようです「国防軍反対!デモ。(no_kokubougun) on Twitter」。

割合は分かりませんが、やはり、「響いている人々」はいるのではないですか。
2013/01/26 11:42 AM, Independent wrote:
 民主党は何に負けたかを考えるとき、私は榊東行氏の『三本の矢』(早川書房、1998年)を思い浮かべる。なぜなら、この小説には「日本というシステムに、敗けたんだ」というセリフがあり、その直後に「そうだ。日本、あるいは三本の矢だ」というセリフが続くからである。

 さて、「三本の矢」とは何かといえば、あまり適切な引用ではないかもしれないが、毛利元就の三本の矢になぞらえたうえで、「政官財の三者が、まるで<三本の矢>のようにお互いに補完し合い、強く結びているため、そうそう簡単に崩すことのできない強度な悪均衡が形成されている」という説明がなされている。

 また、この「三本の矢」の打破についていえば、「矢の一本一本をスケープゴートにしてシステムを漸進的に変革しようとしても、必ず三本の矢の力に跳ね返されしま」い、したがって「三本の矢を一気に叩き折るほどの、意表を突いた大きな衝撃が必要だ」という記述がある。

 民主党は「政治主導」を主張したが、そこには議院内閣制に対する過度の信奉があったのではないか。つまり、立法権と行政権の二権を掌握すれば、何でもできるという錯覚があったのではないか。私からすれば、「三本の矢」というシステムを見落とし、「日本というシステム」に負けたという印象が強い。

 日本国は危機であるといわれる。また、「失われた20年」という言葉もある。日本国は根本的変革を必要としているはずなのに、「日本を、取り戻す」と主張する自民党が政権を担当している。こうした自民党をみると、どのような日本を取り戻そうとしているか、もっといえば、「三本の矢」を強化しようとしていないかと懸念を表明せざるをえない。

 もし自民党が「三本の矢」を強化するようであるなら、日本国の危機を突破できると思えず、民主党などの改革勢力に期待するしかない。私の支持できる政党が出現することを希望する。
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