2012.12.03 Monday 16:33

総選挙で問われること

 

 明後日から総選挙の選挙戦が始まる。一九九四年の選挙制度改革以後、政党の集約化が進んだが。しかし、非自民勢力を結集したはずの民主党は分裂し、小選挙区によって大きな政党を作るという実験が破綻した。多数の政党が乱立する中での総選挙で、国民は何を選択すべきなのか、考えてみたい。

 教科書通りに言うなら、各党の政策をもとに選択すべしということになる。しかし、政治に大事なことは政策を論じることではないと公言する人物が第三極の指導者となっている。むしろ今回の選挙に限っては、政策以前の政治の基本原理のあり方、あるいは政治家の基本的資質を吟味することがはるかに重要ではないかと思う。

 民主党がマニフェストで掲げた政策を実行できなかったことについて責任を追及されるのは当然である。そもそも政権交代以前に建てた見通しの甘さ、政権を運営する中で、特に震災対応に関する誤りなど、厳しい批判を受けるべき点が多い。しかし、経済、財政に関する政策については、試行錯誤がつきものである。間違ったことは修正すればよい。

 しかし、経済の中でも国債の日銀引き受けとなると、間違いに気づいた時には修正不可能な破局をもたらす。また、政治体制の基本原理の変更についても、気づいた時には遅すぎて後戻りできないというのが、二〇世紀における全体主義の成立過程が教える教訓である。

 民主主義の下の国家は、国民の生命と生活を守るために存在する。そして、政治とは社会に存在する問題を解決する具体的な作業の積み重ねである。子供が勉強でき、病人が治療を受けられ、大人が働けるように社会状態を少しでも改善することが政治の課題である。指導者が虚勢を張り、無内容な国家の威信のために国民を動員することは、民主政治の対極にある所業である。これらは、先の大戦における多大な犠牲を払うことによって日本人が獲得した原理だったはずである。

 今メディアを賑わせている指導的政治家は、これまで何を言い、実行してきたのか。日本維新の会の石原慎太郎代表は、つい最近東京都知事として尖閣諸島の買収を宣言し、日中関係悪化の引き金を引いた。核武装や徴兵制も主張している。安倍晋三総裁率いる自民党は、政権公約で憲法改正と国防軍創設を明確に打ち出し、一方で生活保護の削減を主張している。当代の日本人は個人主義になり、義務感を失ったと戦後民主主義に悪罵を投げかける点でも、両党は同じである。

 大言壮語と英雄気取りはやめてもらいたい。自己中心主義で義務を放擲しているのはどこの誰だ。あれだけの原発事故を起こしながら、被害者に対する償いをしようとしない電力会社経営幹部、そうした政策を遂行してきた官僚、そしてそれを認めてきた歴代政権ではないか。もちろん、野田政権もこの点では同罪である。

 九〇年代初頭の政治改革以来の二〇年を「失われた時代」と呼ぶなら、それはひとえに政治家やメディア、それに我々のような学者が内容不明の「改革」や「変革」を追求してきたが故である。今度の選挙でまたしても国民が空虚な変革に賭けるならば、それは不可逆な政治の破壊をもたらすかもしれない。

 大震災と原発事故の後、日本という国家が国民を守れるのかどうかが問われている。国家のために国民が存在する時代に戻るのか、国民のための国を作る努力を続けるのかが、今回の選挙で問われている最大の争点である。

私は、政治は国民を守るための営為であると信じている。そして、私たちは自分の生命と、人間の尊厳と、自由を守るために政治に参加し、応分の貢献をしなければならないと考える。かつてない乱戦の選挙の中で、様々な政党、政治家の志操、理念を見極めて、民主主義を守るために行動することが必要である。

熊本日日新聞12月2日


Comment:
2012/12/04 10:39 PM, Mass wrote:
『安倍晋三総裁は「占領軍が作った憲法を変える」と訴える。いまの憲法は、連合国軍総司令部(GHQ)の占領下で押しつけられたという立場だ。』(朝日新聞 2012年12月4日)

安倍晋三総裁(あなただけじゃないけれど)、私はそういう立場ではありません。
「憲法研究会」のメンバーであった高野岩三郎氏、馬場恒吾氏、杉森孝次郎氏、森戸辰男氏、岩淵辰雄氏、室伏高信氏、鈴木安蔵氏らの名前をご存知でしょう。

安倍晋三総裁、あなたは国民をどこに連れて行くつもりですか。

2012年12月4日の朝日新聞3面の「長谷部恭男・東大教授」のご意見を参考にされてはいかがでしょうか。
2012/12/05 1:38 AM, Massさんへ wrote:
 Massさんは憲法問題に関心があるようですね。私も安倍晋三氏と異なる立場をとっています。

 さて、筑紫哲也氏は『若き友人たちへ』(集英社新書、2009年)で「日本国憲法には、世界で例のないことがいっぱいあります」(44頁)と述べたうえで、第9条と「男女平等」を代表例として挙げています。

 日本国憲法における男女平等条項は第14条と第24条ですが、この憲法草案を書いたのはベアテ・シロタ・ゴードン氏です。私は2000年5月2日の参議院憲法調査会で彼女の話を傍聴したこともあって、第9条とともに男女平等条項も重要であると考えます。

 なお、筑紫氏はこの直後にアメリカ合衆国憲法修正第1条に触れています。ここには言論・出版・集会の表現の自由が謳われていますが、筑紫氏は「自分たちの憲法の権利というものが血肉となって日常化している」(48頁)とアメリカ市民を評価しています。

 私は、アメリカ市民のように、もっと日本国憲法の権利を活用してもよいのではないかと考えます。
2012/12/09 1:20 PM, 村石太ダー&コピペ星人&キンキュージタイダー wrote:
TPPも消費税増税も 失業者ですね。
国防軍 で プログ検索中です。
日本の防衛費については もう何十年前から 言われていますね。
しかし 敗戦国の日本で〜パールハーバー〜広島・長崎〜放射能〜白血病〜
日本の庶民は あまり 世界の軍事関係に詳しくないし〜
国防軍 と いきなり? 力を 入れすぎる?のも恐ろしいというか?
世界が 平和で ありますように。
政治研究会(名前検討中
洋画 パールハーバー を 見ました。愕然としました。
ホタルの墓というアニメで 泣きました。映画でしか戦争を知らない私です。
思えば 明治 大正 生まれの方が この世界からいなくなってきていますね。シベリア 八甲田山〜衆議院選挙まで 後8日ですね。
2012/12/10 4:35 PM, … wrote:
以前、山口先生が評価していた藻谷浩介という人がいた。「デフレの正体」というベストセラーを書いた人だ。その藻谷浩介が!三橋貴明ブログによると、本日放送のTVタックルで藤井聡京大教授から完全論破される予定らしいwwwみんなでタックル見ようお!
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