2012.09.03 Monday 13:58

自壊する政党政治

 通常国会も会期末を迎えて、参議院では野党が問責決議を可決した。これで国会は開店休業状態に陥り、会期が終わると、民主、自民両党の党首選挙が政局の焦点となるだろう。政府与党が、参議院で成立する可能性のない選挙制度改革案などを衆議院で通過させたのは傲慢である。他方、自民党が参議院での問責決議を急ぐあまり、三党合意による消費増税を根拠にした中小野党による問責決議案に便乗したのは、救いようのないご都合主義である。もはやどこの党が悪いなどと批判をしている場合ではない。政党政治家が自らの首を絞め、既成政党批判を売り物にする新興勢力を結果的に勢いづけるという構図である。

 政権交代からちょうど三年がたった今、日本で政党政治が持続できるかどうか、より根本的な問いに我々は直面する羽目に陥った。その責めは、何よりも民主党が負わなければならない。たびたび書いてきたことの繰り返しで恐縮だが、自民党ではないという否定形のアイデンティティだけを共有して、小選挙区で生き残るという動機をもとに民主党という政党を作り出したという政治のモデルが破綻したのである。

 私の関心はもはや、大敗した後の民主党をどうするかという点に向いている。政治には敗北はつきものであり、敗北をいかに受け入れて、以後の教訓にできるかに、政治家の力量が表れる。落ち目の民主党を抜け出して、大阪維新の会に入れてもらおうなどというのは、敗北を避けるだけの行動である。しかし、敗北から逃げようとすればするほど、その政治家は国民からバカにされる。政権運営で多くの失敗を犯したのだから、民主党は従容と敗北を受け入れ、自らのアイデンティティの再定義に基づいて、次の路線を考えるしかない。

 私は『週刊東洋経済』という雑誌に、毎月政治時評を書いている。九月一日号に私の文章が載ったが、たまたまその次のページに読売新聞主筆の渡邉恒雄氏のインタビューが載っていた。二つの文章は民主党の今後について対照的な選択肢を示している。

私は、野田佳彦首相の下で民主党は読売新聞路線を採択し、産経新聞路線の自民党と対立しているように見えるが、これでは政権交代を選んだ国民は浮かばれないと考えている。そして、鳩山政権誕生時に掲げられた人間尊重の社会ビジョンと環境重視の基本政策に立ち返り、明確な理念と周到な政治戦略を立て直せと主張した。

渡邉氏は、私と同様大阪維新の会などのポピュリズムには批判的であるが、私と対照的に野田民主党の読売新聞路線には満足している。そして、野田民主党に対して第二の保守合同として自民党と合体し、税制やエネルギーについて現実的な道を取れと主張している。三党合意の延長線上にこれからの日本政治を考えるならば、いっそのこと一つの政党になれというのも奇想天外な話ではない。

 これから民主、自民両党の党首選びが本格化する。自民党の総裁選びは首相候補者の選択で、にぎやかになることだろう。民主党の方は敗北の責任者を決める作業である。しかし、この三年の経験を総括し、失敗を乗り越えるために自分たちは何をしなければならないかを議論する貴重な機会である。翼賛政治になだれ込むのか、民主政治の一翼を担うのか、決意しなければならない。そこで真剣な議論ができないようなら、民主党という政党は解散した方がよい。

 秋にも行われる総選挙は、税と社会保障の改革をどう具体化するか、原発をどうするかなど、これからの日本の命運を決定する極めて重要な選択の機会となる。人口減少局面の日本社会で、変動する東アジアの国際環境の中で、私たちがどのような生き方を選ぶのかが問われることになる。その時に政治家や政党が、基本理念と大きな枠組みを提示できなければ、政党政治や代表民主主義そのものが要らないという話になりかねない。この危機を政治家自身が認識しているのかどうか、私は大きな不安を持つ。

熊本日日新聞9月2日


Comment:
2012/09/09 6:29 PM, manifold wrote:
 山口先生の
「この危機を政治家自身が認識しているのかどうか、私は大きな不安を持つ。」とは、直接つながりませんが、「私の不安」を書かせていただきます。
 東京都の石原慎太郎知事は、高速増殖原型炉「もんじゅ」を視察し、「廃炉はとんでもない話。絶対にしちゃいけない」と述べ、今後の原発新設については「半分本気で東京に造ったらいいよ」と語った。そして、「誰がつくった手続きか知らないが、そういったものを簡略化、スピードアップするのが政治家の責任」と批判した。今後の原発新設については「半分本気で東京に造ったらいいよ」と語った。(朝日新聞2012年9月6日より)
 びっくりしたので、「もんじゅ事故の行く先は?」(高木仁三郎 岩波ブックレット)をもう一度読み返しました。やさしい語り口で、わずか61ページですが、高速増殖炉についてのすぐれた入門書ではないでしょうか。ウラン、プルトニウムについても分かりやすく書かれています。
 都知事は、「もんじゅ」のことをご自身で事前に調べて、90分あまりの視察をされたのでしょうか。
また、「半分本気で東京に造ってもいい」と言っていますが、では、具体的にどこに?
 そして、「誰がつくった手続きか知らないが、そういったものを簡略化、スピードアップするのが政治家の責任」と理解不能なことをおっしゃる。
 山口先生は、「若者のための政治マニュアル」のp14に「政治の目的は生命の尊重」、p19に「…政治家には、国民の生命を預かるという覚悟が必要である。…」と書かれています。分かりやすいです。心からそう思います。
 都知事に、このような覚悟があるのでしょうか。
 赤川次郎氏が朝日新聞に連載していた(三毛猫ホームズと芸術三昧!)前進する元気、与えたい(2011年9月30日)が思い出されます。

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