2012.07.10 Tuesday 17:11

民主党という実験の終結

  小沢一郎氏が離党したことは、二〇年がかりの政治改革、政党再編の試みが挫折したことを意味する。ちょうど二〇年前の夏、自民党の金丸信副総裁(当時)が政治資金問題で副総裁を辞任し、それに連動して竹下派の内紛が始まったところから、日本の政党政治を刷新する模索が始まった。

そして、その中心にはいつも小沢という政治家がいた。皮肉なことというべきか、小沢が負けることによって日本政治は次の段階に進むという繰り返しであった。竹下派の抗争、細川連立政権の崩壊、新進党の瓦解、小沢の仕掛けはことごとく失敗してきた。その挙句に、民主党に合流した。

二〇〇六年のいわゆる偽メール事件で民主党が危機に陥ったことで、小沢の出番が回ってきた。小沢が代表に就任した前後から、私は彼とたびたび議論し、政権交代への道筋について意気投合した。小沢代表が率いる民主党が自民党政権を倒すしかない、と確信した時期があった。小沢は小泉自民党が構造改革路線によって日本社会を分断したことに危機感を持ち、「生活第一」路線で民主党の政策軸を立て直した。民主党に生活保障を軸とする社会民主主義路線を提唱してきた私は、自民党田中派の嫡子である小沢に最大の理解者を見出した思いであった。

小沢がいなかったら、政権交代はあり得なかった。しかし、小沢がいたから民主党は分裂した。この矛盾が民主党の限界である。

小沢が掲げた生活第一も権力闘争の方便でしかなかったところに、民主党の最大の失敗があった。民主党分裂の引き金は消費増税とマニフェスト遵守の矛盾である。そもそも生活第一が理念の次元で共有されていれば、税制など所詮は手段であり、いくらでも妥協できる話である。野田佳彦首相は増税という手段を絶対視し、小沢はマニフェストの形式的遵守に自分の存在意義を求めた。理念不在はどちらも同罪である。

民主党は小選挙区が作った寄木細工であり、これに理念を求めるのは木によって魚を求めるたぐいの話であることは、百も承知である。それにしても、貪欲放埓の資本主義経済の末路を見て政治が何をなすべきかを考えれば、生活第一を理念として民主党が共有することはできると私は信じてきた。しかし、その夢も破れてしまった。

野田首相の下で民主党という器が存続しても、それはもはや自民党の複製でしかない。その意味でも、民主党という実験は終わる。我々は、様々な試行錯誤を経て、政党には望ましい社会に関する理念の共有が必要であるという当たり前の真理を、また小選挙区が自動的に二大政党制を作るわけではないという帰結を知らされたのである。

政権交代の夢を追った民主党の政治家がなすべきことは単純である。自分たちが何をしたかったのかを思い出し、これからどのような選択肢を提示できるかを考えることである。小沢を切ったことで妙な勝利感に浸っている指導部に対して論戦を挑んでほしい。

共同通信配信 琉球新報など7月3日

Comment:
2012/07/10 10:46 PM, 周南連山 wrote:
小沢氏は、「国民の生活が第一」という分かりやすい表現を使っているが、その根本の主張は 以前より彼が常に発言しているように、中央官僚支配体制の打破、特別会計・特殊法人等における巨大な金額の無駄遣い(官僚・利権屋等による公金横領)の撲滅 等々である。 これらが出来なければ日本の再生はない。
小沢氏は「消費増税はマニフェスト違反」という形式論で消費増税に反対しているのではない。
「消費増税の前にやるべき事がある、膨大な無駄ガネの削減による財源確保を 」と言っている。

小沢氏を権力闘争志向として批判しているが、そういう面は否定できないにしても、権力を握らなければ改革は出来ない。
山口さん、あなたは政治学者なんだから、小沢氏への個人的な感情を乗り越えて、正当に評論すべきだと思う。
中央官僚横暴支配、政治家の無力という現状において、この状況から脱却するために 政治学者として最大限 尽力してほしい。
 
2012/07/11 12:02 AM, ... wrote:
これって本当に山口氏が書いているのか??

言い方が変に回りくどいし小沢氏を途中から
呼び捨てにしたり何様なんだ??

2012/07/12 8:42 AM, え wrote:
新候補 hpアップまえの選挙の必要性

 その他 政界 投票について

  知恵ないの?
2012/07/12 9:13 AM, 藤原 wrote:
山口先生、ご自分が政策提言してきた民主党を割って出た小沢一郎への恨み節があまりにつよくて、冷静な判断を欠いていらっしゃるのではありませんか?
鳩山氏は官僚の操縦を誤りました。
続く菅氏も、財務相時代から官僚の洗脳に抵抗できず、ついに「増税」を口にしました。「脱原発依存」も思いつきの政策だったと見えます。(大飯再稼働にたいして、何ら具体的発言をしないことなど、菅氏の言動に「脱原発依存」を進める具体的なものは見られません。そもそも、「脱原発依存」は「脱原発」ではないのです。)
そして、野田総理。もはや明白な「霞ヶ関操縦内閣」です!これも、財務省の洗脳にしてやられました。彼はもともと、「民主党」の政策スローガン=国民の生活が第一!には相応しくない人物でした。

ここまで民主党政権の裏切りが明らかになって、ついに新党を立ち上げた小沢氏を、私たち国民は断乎支持します。山口先生は「今、私が民主党に望むのは、解散の前に代表選挙を行い、この3年の総括をもとに民主党の理念と政策の基軸を徹底的に議論し、旗を立て直すことである」などとおっしゃいますが、いったい民主党のどこにそれを期待するのでしょう? もはや民主党は、国民の生活を第一に考えようとはしない議員の党です。これからも離党者は五月雨式に増えていくでしょう。こんな党にまだ期待を残すことがどれほど有害なことか、山口先生にはどうしてお分かりにならないのでしょうか。
2012/07/12 12:48 PM, 西村 wrote:
矛盾のないアクターとしての勢力など一つも存在しない。直近の国政選挙は参議院選挙だったため、民主党と自民党は増税というふた文字を訴えて戦ったことを鑑みれば、

借金づけ国家作った自由民主党、
与党として未熟な民主党、
そして自らが幹事長だった折にはガソリン税暫定税率を反故にした上に予算編成で全く切り込めなかった小沢氏とその新党。

強いて言えば小沢氏には一番共感できず心底辟易する。
2012/07/15 9:23 AM, 山田 wrote:
あなたは、テレビにに出演する度に批判を受ける
発言をする。顔も疑わしい面構えだし
思想も偏っている、一切発言を控えたほうがよい。
2012/07/15 7:39 PM, conformal_mapping wrote:
政権交代の夢を追った民主党の政治家がなすべきことは単純である。自分たちが何をしたかったのかを思い出し、これからどのような選択肢を提示できるかを考えることである。

私も考えることが大切だと思います。

森英樹元名古屋大学教授著「新版 主権者はきみだ」(岩波ジュニア新書)のp91に,次のような記述があったのを思い出しました。
くどいようだが,思想とは考えること。(中略)なにも考えずに,ただ先生や上司や役所や政治家や,つまり「上」に立つ人のいうことに従うだけ,というのは,楽といえば楽だろう。だが,その結果がとんでもない悲劇につながることを,歴史はいやというほど教えてきた。
2012/07/17 5:55 PM, 蔵間室長 wrote:
お久し振りです。
以前、滋賀県大津市長にゼミの生徒さんだった越直美さんが就任された事を、
日記で、我が事のようにお喜びになられていましたね。
今、大変な事になってますよ

http://deliciousicecoffee.blog28.fc2.com/blog-entry-4711.html
隠蔽としがらみで、正義が地に堕ちています
さすが先生の教え子ですね
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