2017.12.12 Tuesday 17:07

混乱期への対処

 衆議院解散と同時に民進党も事実上解散し、総選挙は自民・公明の与党、希望の党、共産・社民の左派という3つの勢力が争う構図となった。私自身、野党協力を進めるべく動いてきたので、前原代表には裏切られた思いだが、政治の世界では裏切られる方がバカである。嘆いていても仕方ないのでこれからどうするか、考えなければならない。
 現在の日本政治にとっての最大の課題は、権力を私物化し、暴走を続けてきた安倍政権に対し、一旦ブレーキをかけることである。それには、主義主張は後回しにして大きな野党を作って自民党を凌駕するのが手っ取り早い方法のように見える。新党が本当に寛容な保守の政党なら、大結集も可能だろうと、私自身考えた時期もあった。しかし、小池氏の女帝然とした他人を見下した態度を見ると、この塊が権力をとっても憲法や民主主義の破壊が進むのは同じかもしれないという危惧がある。
 この総選挙で一気に政権交代とまでいかなくても、今まで安倍政権による憲法破壊に正攻法で抵抗してきた立憲主義勢力を政治の選択肢としてきちんと残すということも、安倍政治を止めるための1つの道筋だと思う。早晩大きな政党再編が起こるに違いないのだから。ここは政治家一人一人が、自分の原理原則と良心に照らして恥じない行動をとり、それを市民が支えるしかない。

東京新聞10月1日

2017.12.12 Tuesday 17:06

総選挙と野党の在り方

 衆議院解散とともに、最大野党だった民進党が事実上分裂し、政党の戦列は混沌としたまま総選挙に突入することになりそうである。安倍首相が解散方針を表明した9月25日から1週間、野党側で私自身が経験したり関係者から聞いたりしたことを整理しておきたい。
9月26日 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(以下市民連合)を代表して私と数名のメンバーは、4野党の幹事長、書記局長と会談し、総選挙における小選挙区候補の一本化と7項目の共通政策骨子を提言する要望書を手交した。共産、自由、社民の各党だけではなく、民進党幹事長からも、基本的に同意できるので、要請の実現に向けて努力したいとの回答を得た。市民連合を媒介とした野党のブリッジ共闘の枠組みができたと私は判断した。しかし、同日夜、新聞記者から民進党の前原誠司代表が、連合の神津里季生会長とともに小池百合子東京都知事と会談するという話を聞き、私の楽観は一転した。民進党執行部は小池新党と連携し、従来の野党協力を解消し、リベラル派を切り捨てるという方針を追求するのかと、暗澹たる気分となった。
27日 小池知事が希望の党代表に就任するとの立ち上げの記者会見が行われた。民進党の総選挙候補者はすべて希望の党から公認を得て立候補するという前原代表の方針が表明された。
28日 衆議院解散。その後の民進党両院議員総会で、衆議院議員及び候補者がすべて希望の党へ移行して総選挙を戦うという前原提案が了承された。
29日 小池氏は民進党からの公認申請者について、憲法、安全保障に関する見解が異なるリベラル派を排除すると明言した。これにより、民進党内のリベラル派は無所属で出る、新党を結成するなど新たな対応の模索を始めた。
30日 民進党リベラル派と連合は前原氏に対して、希望の党の排除方針を撤回させるべく話し合うよう求めたが、希望の党からは反応はなかった。
10月1日 新党結成か希望の党への合流かをめぐって、リベラル派の中での模索が続いた。NHKの日曜討論で、希望の党の若狭勝氏がこの総選挙で一気に政権交代を実現することは無理と発言し、この党の戦略が明確でないことが露呈した。
10月2日 枝野幸男氏を中心として、リベラル派の新党、立憲民主党が立ち上げられることになった。連合も、旧民進党所属の議員について現在の所属に関わらず、個別に推薦するという方針を決めた。
 前原方針が提案されたとき、私は最大限の希望的観測を描いてみた。希望の党にあるのは小池氏の人気とメディアへの影響力だけであり、総選挙を全国で戦う資金、組織、人材はすべて民進党が提供することになる。したがって、小池氏の新鮮さをアピールする高飛車のメッセージの陰で、実際には民進党の政治家が希望の党を動かし、この総選挙で一気に自民党を過半数割れに追い込み、政権交代を実現するというものである。私は前原氏自身から、最終的にはリベラル派を含めて200人の民進党候補が希望の党で公認され、基本政策も右翼的な改憲ではない、従来の民進党の路線と矛盾しない表現になると聞かされたこともある。そのような可能性もあったのかもしれない。しかし、候補選定と政策の交渉は極秘裏に行われ、その間希望の党の側から排除の方針が強い言葉で繰り返され、リベラル派にとって希望の党から出馬するという選択はありえなくなった。
 以上が、私が見た事実経過である。前原氏の最大の誤りは、希望の党への合流の手続きについて小池氏との間で明確な取り決めをしなかった点にある。金も組織も民進党が出すのだから、前原氏が優位に立って実務を進めることもできたはずである。しかし、表向きは一貫して小池氏のペースで話が進み、リベラル派は追い詰められた。小池氏のメディアでの独走を許したことで、前原氏は失敗した。
 小池氏にも大きな失敗があった。それは、首相候補を決めないまま新党を作ったことである。小池氏が代表になって新党を立ち上げる以上、首相候補には小池氏自身がなるしかない。しかし、都知事を1年余りで放り出して国政に出ることも大きな批判を招く恐れがある。小池氏の進退が定まらないまま政権選択を叫んだところで、迫力はない。
 民進党の分裂はいくつかの偶然と、指導者の錯誤の結果起こったのだが、長い目で見れば過去25年間の政党再編における、大きな野党を作るプロジェクトの矛盾がこのタイミングで露呈したということもできる。小選挙区制を導入して以来、自民党に対抗する大きな野党を作る試みがあり、挫折した。日本の場合、左派が二大政党の一翼を担う力がなく、左派と自民党以外の保守勢力の提携で対抗政党を作るしかない。しかし、政治の基本方針をめぐって軋轢が続き、一体感を欠くという弱さを抱え続けてきた。今回、希望の党という個性の強い保守新党と提携するにあたって、民進党内の食い違いが露呈した。小選挙区を生き残るという動機だけで政党を統合することの困難を痛感した次第である。
 この総選挙は、自民・公明連合、希望の党、新党を含む野党協力の3極の構図となった。民進党の分裂で、自民党は過半数維持に向けて胸をなでおろしているのだろう。希望の党の混乱を見ていると、この党が早晩内紛を起こし、さらなる野党の再編が起こるのは必至と思われる。野党の足の引っ張り合いにも意味はある。これから安倍政治に対決する際に、どのような基本政策で選択肢を提示するのか、この選挙結果から見えてくるのではないか。立憲民主党にとっては、希望の党の実体が存在しない地方においてどこまでメンバーを確保できるかがとりあえずの焦点となる。

週刊東洋経済 10月14日号

2017.12.12 Tuesday 17:05

リベラルの必要性


 紆余曲折の末に立憲民主党が結成され、リベラル派市民の受け皿ができたという議論が聞かれる。不勉強な若手学者やマスコミがリベラルを左翼と呼んだり、リベラルの支持基盤は細っていると言ったりしている。リベラルとは何か、混乱があるので、整理しておきたい。
 実は、日本政治においてリベラルは太い流れの1つである。特に戦前、軍部を恐れず戦争と独裁に反対した石橋湛山がリベラルの源流とされている。安倍政権の下で共謀罪など政府権力を強める立法が進められ、戦争に踏み込まんばかりの勇ましい言説が飛び交う今、この意味でのリベラルは大いに必要とされている。また、この理念を支持する国民も多い。
 この言葉が生まれたヨーロッパでは、個人の自由、特に経済的自由を尊重するという意味で使われたが、20世紀アメリカでは民主党の進歩派が、あらゆる人間に人間らしく自由に生きる権利を保障するという観点から、人種や性別による差別を許さないルールを確立し、貧困層に対しても生きる権利を保障するために政府が積極的に政策を展開するという意味で、リベラルの意味を転換した。
 立憲民主党が追求するリベラルは、日本における伝統的なリベラルに、社会的な平等や公正を志向するアメリカのリベラルを加味したものである。今の日本政治に必要な選択肢である。

東京新聞10月8日

2017.12.12 Tuesday 17:04

ばかばかしい選挙?


 今日は総選挙の投票日である。台風の接近もあり、首都圏は天気が悪いようだが、ともかく読者の皆さんには投票に行っていただきたい。
 今回の解散には大義がない、選挙の争点がわかりにくいと言われた。著名な評論家が、ばかばかしい選挙だから棄権しようとインターネット上で呼びかけたことも話題となった。しかし、国民がばかばかしい選挙、ばかばかしい政治に背を向け、遠ざかることができると思うのは錯覚である。国民の側が遠ざかったつもりになっても、ばかばかしい政治は常に国民に覆いかぶさる。そして、国民に増税や戦争といった不条理を押し付けるかもしれない。
 選挙で勝利して多数を占めた勢力は、自分たちの政策が国民の総意に基づくと主張するだろう。もちろん、それは虚構である。しかし、民主政治はそうした虚構の上に成り立たざるをえないのである。
 国民の半数だけが投票に行き、そのまた半分の票を得て多数派が権力を握れば、それこそ本物の虚構である。私たちは、虚構を少しでも現実に近づけるために、投票するしかない。様々な意見が投票で表現され、多数派がすれすれの勝利を収めるならば、彼らは自らの権力基盤が虚構であることを認識し、現実の民意を恐れ、少しは慎重に行動するだろう。冷笑とあきらめは民主主義を掘り崩す病原菌である。

東京新聞10月22日

2017.12.12 Tuesday 17:02

日米トンデモ合戦

 12日夜のNHKニュースを見ていたら、トランプ米大統領の暴言がトップで伝えられていた。NBCが伝えた大統領の核軍拡構想が誤報であるとして、放送免許の剥奪に言及したのが大ニュースだというのである。同じようなことは安倍政権の総務大臣も言ったことがあるが、あの時にNHKはこんな取り上げ方をしただろうかといぶかしく思った。
 それはともかく、トランプ大統領の感情的な発言や閣僚、側近との軋轢は常軌を逸している。特に北朝鮮と米国の緊張が高まる中、世界一の大国のトップがこんな不安定な人物で大丈夫かと心配になる。
 しかし、首脳のトンデモ発言は他人事ではない。安倍首相は北朝鮮を批判することを選挙戦の道具にしている。しかし、ロシアやヨーロッパ諸国、さらに実際に戦争が起これば多大な犠牲を強いられる韓国の首脳は、圧力をかけることと同時に政治的解決を求めている。対話は一切無意味で、圧力あるのみという安倍首相は、実は世界の孤児である。
 売り言葉に買い言葉の勢いで軍事衝突が起きる危険性が存在する中で、ひたすらトランプ大統領との盟友関係を強調することは、日本の安全を確保する道なのか、日本に災厄をもたらす道なのか。この点はこの総選挙で各党が現実を踏まえて真剣に議論すべき争点である。

東京新聞10月15日

2017.12.12 Tuesday 17:00

政治の堕落

 安倍政権や自民党に対する批判を繰り返さざるを得ないので、こちらも嫌になる。それにしても、麻生副総理の選挙における野党の収縮は「北朝鮮のおかげ」という発言は絶対に許せない。麻生氏の放言は政府首脳の本音であろう。
 選挙戦の中で、安倍首相は北朝鮮の脅威に屈しないと繰り返していた。朝鮮半島の緊張緩和のために日本が何をするかという具体的な政策は一切なしで、ともかく圧力を高めれば北朝鮮が態度を変えるというのが首相の主張だった。この主張は、真摯で賢明な外交戦略ではなく、国民の中に北朝鮮に対する恐怖と憎悪を煽るための政治的プロパガンダであった。麻生氏の本音は、はしなくもそのことを裏書きした。
 安倍首相は国難打開の選挙とも言った。しかし、国難を打開するための政策を論じるべき臨時国会は開かず、11月初旬に来日するトランプ大統領とゴルフに興じる予定である。ゴルフをしながら真剣な政策議論ができるとでもいうのか。
 こんなたるんだ政治指導者が、権力を維持するためだけに解散総選挙をうち、国民をたぶらかして勝利をおさめ、さらに憲法改正にまで手を付けるというのが最大の国難である。国会の中で野党は圧倒的少数である。市民が諦めず、ふざけるなという声を上げ続け、批判的な世論を持続するしかない。

東京新聞10月29日

2017.12.12 Tuesday 16:59

総選挙が示した野党の課題


 与党圧勝の総選挙結果だが、圧倒的な議席数の背後には安倍晋三政権の脆さや揺らぎも現れつつあることがわかる。この総選挙は前例のない奇妙なものであった。選挙戦中に朝日新聞が行った世論調査では、安倍首相の続投を支持する人が34%、支持しない人が51%、自民一強体制をよいことだと思う人が15%、よくないことだと思う人が73%だった。安倍政権の政治手法や政策に不安や不満を持つ人が多数派であるにもかかわらず、選挙では圧勝した。
 なぜ不人気な政権が勝てたのか。解散時の最大野党だった希望の党が、政権選択と叫びつつ、安倍氏に代わる首相候補を具体的に打ち出すことができず、「排除」を持ち出して野党勢力を分断した時点で、勝負はついていた。政権を選べと言われつつ、野党側が次の政権のイメージを示すことをしないのだから、有権者は野党に投票するわけにはいかなかった。総選挙をおごれる安倍政権に対する「お灸」と意味づけるならば、人々は安倍政権の存続を前提としつつ、もっと自由に野党に投票しただろう。
 55年体制の下では、自民党政権の存続は自明の前提であり、有権者は自民党の行状を見てしばしばお灸をすえ、与野党伯仲状況が出現した。その後、1990年代の選挙制度改革と政党再編の後は、総選挙は政権選択の機会とされた。そのことの是非について、この選挙を通して考え直す必要があると思う。
 政権交代のない55年体制を打破するために小選挙区制が導入され、自民党に対抗する大きな野党の塊を作る模索が続いてきた。しかし、新進党の解体、民主党の分裂、さらに今回の民進党の分裂と、その試みはことごとく失敗に終わった。3回同じ失敗を繰り返したということは、小選挙区というタガをはめて大きな野党を作るという発想そのものが間違っていたことを意味する。私自身はこの25年ほど、政治改革と政党再編の旗を振った張本人だったので、意地を張って、失敗してもともかく野党結集を叫んできた。しかし、間違いは認めなければならない。
 民主党が2009年に政権交代を成就できたのは、政権交代がこの党の唯一の結集原理であったからで、それを実現すれば同党の歴史的意義はなくなったわけである。自民党は長い与党経験の中で、党内の多様性を持ちながら権力保持のためにまとまる術を体得している。野党を作るときには理念や基本政策を軸に党の統合を図らなければならない。しかし、小選挙区で生き延びるという利害以外に共有すべき理念がないのだから、自民党に挑戦する際にも迫力が生まれない。
 今回、立憲民主党が70数名の候補者しか擁立できなかったにもかかわらず、比例代表で1000万を超える票を得たのは、前原誠司氏が民進党の右派や機会主義者を希望の党に送り込み、それに同調しない政治家がリベラリズムを基調とする旗幟鮮明な新党を立ち上げ、これを歓迎する市民が投票したからである。リベラル派だけで、前2回の総選挙における民主党の比例票を上回る得票ができた。共産党の比例票が前回よりも160万も減ったのは、民主党・民進党の雑居性を嫌っていたリベラルな市民が立憲民主党を支持したためだろう。
 選挙制度の再検討は必要である。少なくとも、細川護熙氏が言うように、小選挙区と比例代表を1対1の比率にすること、比例代表を全国一本にすることが望ましい。とはいえ、それが実現する可能性は低い。今の制度の中で自民党に対抗する、政策的基軸を持った野党を作り出すという課題に取り組まざるを得ない。一件、二律背反に見える政策的な一貫性と政党の規模拡大をどう両立させるのか。
 立憲民主党が野党連合の主軸に成長するためには、革新、リベラルの市民だけではなく、安倍政治に不安・不満を持つ穏健保守層の支持を集めることが必要となる、その意味で、枝野幸男代表が自らを保守と規定することは的確な路線である。今の日本政治においては、何を保守するかで大きな路線対立を描くことができる。安倍首相は、大日本帝国を回復し、これを保守したいと思っているのであろう。これに対して、野党は戦後民主主義を保守するという旗印を明確にすべきである。ここで言う戦後民主主義とは、特に1960年代以降自民党と野党の相互作用の結果定着した路線である。日米安保を基調としつつ、憲法の枠内での適度な自衛力を持ち、アジア諸国との友好関係を保持する。市場経済を基調としつつ、ある程度の公平な分配を維持する。かつて自民党の穏健派が追求したこのような路線を掲げる勢力が、自民党に対抗することで、政治の選択肢が生まれる。昔、自民党内で起こった右派と穏健派の間の権力交代を政党間で起こすというのが、今後ありうる政権交代のイメージである。
 もちろん、単純に昔に戻れという話ではない。人口減少時代でいかに経済の持続的成長を実現するか、中国が大国となった時代にいかに東アジアの秩序を作るか。難問山積ではあるが、自民党政権が答えを持っているわけではない。
 次の国政選挙は2年後の参院選だろう。それまで、野党の合従連衡には背を向け、政策構想を練ることが立憲民主党の課題である。選挙協力は選挙が目前にならなければ具体的に進捗しない。むしろ、同党は他の野党や労働組合の連合とも緊張感を持って、政策論議を深めるべきである。例えば、原発のない社会をつくるという大きなビジョンを描き、その中で新たな雇用や地域経済の創造という政策を打ち出して連合を説得するというような力技を発揮できれば、政党政治の可能性に対する人々の期待を喚起することもできるだろう。野党は志を持って、思索と論議を重ねる時である。

週刊東洋経済 11月11日号

<<new | 1 / 156pages | old>>
 
RECOMMEND
CALENDAR
NEW ENTRY
ARCHIVES
CATEGORY
COMMENT
PROFILE
MOBILE
LINK
SEARCH
OTHER

(C) 2017 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.